NHK Eテレの番組「3か月でマスターする絵を描く」第7回では、私たちの身近な存在である犬と猫を、よりリアルに、そして生命感豊かに描くための秘訣が紹介されました。
この記事を読めば、講師である柴崎春通先生が伝授する、犬と猫の顔の構造的な違いの捉え方から、筋肉のつき方、さらには毛の質感や立体感を出すための光と影の使い方、毛の流れを意識した筆使いといった具体的な絵画技法を深く理解できます。
また、生徒役の山之内すずさんが絵画に挑戦し成長していく様子や、柴崎先生の愛猫マロンちゃんとの心温まるエピソードを通じて、絵を描くことの純粋な楽しさや、続けることの大切さを再発見できるでしょう。
3か月でマスターする絵を描く 第7回
2025年5月14日に放送されたNHK Eテレ「3か月でマスターする絵を描く」の第7回は、「犬と猫の違い」を深く理解し、それを踏まえてよりリアルで生命感あふれるペットの絵を描き出す方法を探求する内容でした。
30分間の放送の中で、具体的な技法と共に、描くことの楽しさが伝えられました。
巨匠・柴崎先生と愛猫マロンちゃん登場!
この回の魅力の一つは、何と言っても講師である柴崎春通先生と、その愛猫マロンちゃんの存在です。
柴崎春通先生は1947年千葉県生まれの画家で、和光大学芸術学科卒業後、荻太郎氏や中根寛氏に師事しました。
長年美術講師を務める傍ら個展を中心に作品を発表し続け、2001年には文化庁派遣芸術家在外研究員としてニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグで研究するなど、その経歴は輝かしいものです。
さらに、2017年に開設したYouTubeチャンネル『Watercolor by Shibasaki』は、2024年12月には登録者数181万人を突破。
「おじいちゃん先生」として親しまれ、その温和な語り口と丁寧な指導で、国境を越えて多くの人々に描く楽しさを伝えています。
「絵というのはデッサン力よりもデザイン力」という哲学を持ち、初心者にも分かりやすい指導法が特徴です。
そして、番組に愛らしいモデルとして登場したのが、柴崎先生の愛猫マロンちゃん。
茶トラのオス猫で、すらりとした手足と長い尻尾が特徴の運動神経抜群な猫です。
マロンちゃんは単なるモデルではなく、先生にとってはかけがえのない家族。
以前飼っていた猫を亡くし悲しんでいた先生のアトリエに雨宿りで現れたのがマロンちゃんで、「生まれ変わり」と感じて迎え入れたという心温まる出会いのエピソードがあります。
番組収録中も先生のことが大好きで、その場にいるだけで和やかな雰囲気をもたらす、まさに癒やしの存在です。
犬は箱、猫は球?驚きの描き分け術!
番組では、犬と猫の顔を的確に捉えるための、驚くほど分かりやすい方法が紹介されました。
これは、複雑な形状を単純な幾何学形態に分解して捉える美術の基本に通じるもので、初心者でも直感的に理解しやすいアプローチです。
まず、犬の顔を描く際の基本的な考え方として、柴崎先生は「犬の顔は『箱の形』」と提唱しました。
犬の頭部全体を一種の四角い箱のような立体で構成されていると捉えることで、複雑な形状が理解しやすくなります。
具体的には、鼻の周りから頬、顎にかけてのラインが比較的直線的であり、猫に比べてしっかりとした骨格を感じさせる部分を意識することが重要です。
この「箱」を意識することで、犬種による頭部の長さや幅、マズルの形状も捉えやすくなります。
一方、猫の顔を描く際には「球が3つ」というアナロジーが示されました。
これは、猫の顔の主要部分であるおでこ、鼻先(マズル部分)、そしてあごのラインを、それぞれ独立した球体が組み合わさってできているとイメージする方法です。
この3つの球体を意識することで、猫特有の丸みを帯びた、柔らかく優しい顔の印象を効果的に捉えることができます。
猫の顔は犬に比べて全体的に曲線が多く骨格も華奢なため、この「球」の組み合わせという考え方は非常に有効です。
筋肉と毛並みで命を吹き込む秘訣とは?
動物のリアルな描写には、表面的な形だけでなく、その内側にある筋肉のつき方や、体表を覆う毛並みの表現が不可欠です。
番組では、これらの違いを捉え、生命感を吹き込むための具体的な技法が伝授されました。
犬と猫では、筋肉のつき方に大きな違いがあります。
犬は一般的に筋肉がよく発達し、骨格もしっかりしており、体つきは直線的な印象で力強さを感じさせます。
対して猫は、非常にしなやかで柔らかい印象の筋肉を持ち、曲線的で瞬発力や柔軟性に富んだ動きを可能にします。
この違いを認識することが、毛の流れや体のボリューム感、自然な動きを表現する上で極めて重要です。
柴崎先生は、体のどこに力が入り、どの部分が柔らかいのかといった内部構造を意識することの重要性を説きました。
次に、毛の質感と立体感を出すための「光と影のマジック」です。
光源を常に意識し、光が当たる「日向」と遮られる「日陰」で色の明るさやトーンを明確に変えることで立体感が生まれます。
特に注目されたのが「毛の質感を感じさせるかすれたタッチ」という技法。
影になる部分を単に暗い色で塗りつぶすのではなく、絵筆のタッチを活かして「かすれ」させることで、動物のふさふさとした毛の質感を表現します。
これは水彩画のドライブラシ技法にも通じるもので、様々な画材で応用可能です。
最も暗い箇所を見極め、そこからのグラデーションを意識することも重要です。
さらに、「毛の流れに沿った筆使い」も生命を吹き込む上で欠かせません。
動物の毛は体の部位ごとに一定の方向に流れるように生えており、この自然な流れを捉えて筆を運ぶことが基本です。
毛の流れに沿った筆使いは、表面的な質感を高めるだけでなく、その下にある体の丸みや筋肉の起伏、骨格構造といった三次元的なフォルムを効果的に示唆します。
山之内すずさんも感動!描く喜びを体験
番組で生徒役を務めたタレントの山之内すずさんの存在も、多くの視聴者にとって共感を呼ぶものでした。
2001年生まれの山之内さんは、絵画初心者として柴崎先生から直接指導を受け、犬と猫の描き分けというテーマに真摯に取り組みました。
彼女は以前、「学生時代は絵を描くのが好きではなかったが、大人になって純粋に絵が描きたいと思うようになった」と語っており、評価から解放された創作活動としての絵画に魅力を感じている様子です。
この感覚は、多くの大人が共感する点です。
番組内では、特に犬の毛のふさふさとした質感を出すための「かすれたタッチ」に苦労する場面も見られましたが、柴崎先生の的確なアドバイスを受けながら、回を重ねるごとに目に見えて上達していく様子が紹介されました。
彼女が抱く疑問やつまずき、そしてそれを乗り越えて上達していく過程は、絵画をこれから学ぼうとする多くの初心者にとって「自分にもできるかもしれない」という希望と勇気を与えました。
彼女の素直なリアクションや一生懸命な姿は、番組に親しみやすさをもたらし、教育プログラム特有の堅苦しさを和らげる効果もありました。
柴崎先生直伝!続ける勇気が未来を変える
番組の最後には、柴崎春通先生から非常に心強く、温かいメッセージが送られました。
「続けることで絵は確実にうまくなる」という言葉は、才能の有無を気にして一歩を踏み出せない人々や、練習の途中で壁に突き当たっている人々にとって、継続することの大切さとその先にある成長の可能性を示唆するものでした。
このメッセージは、絵画技術の習得という側面だけでなく、創造的表現への扉を再び開こうとする人々にとって、心温まる励ましとなったことでしょう。
愛するペットの姿を自らの手で描き出す行為は、日常に新たな色彩と喜びをもたらします。
それは対象への理解を深め、観察眼を養い、そして自分自身の内面と向き合う豊かな時間となります。
柴崎先生は、自身のオンラインサロン「ShibARTS」などを通じても、描く仲間との繋がりや学びの場を提供しており、絵を描く楽しみをさらに広げる多様なアプローチを提案しています。
まとめ:犬と猫の描き分け術と描く喜び について
NHK Eテレ「3か月でマスターする絵を描く」第7回では、柴崎春通先生による犬と猫の描き分けの具体的な技法が分かりやすく解説されました。
犬の顔を「箱」、猫の顔を「3つの球」で捉える方法や、筋肉のつき方、光と影、毛の流れを意識した描写は、初心者にも実践しやすい内容です。
山之内すずさんの挑戦する姿と共に、絵を描くことの楽しさと継続の大切さを改めて感じさせてくれる放送でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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